隙間風
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『ピアノソナタ第8番 ハ短調』
あれからリサコと30分ばかり話をしてからアタシはそのお店を出れた。
席を立てたタイミングは軽快な着信音。
「...あ、メール...」
呟きと同時に開かれた携帯の画面は彼女の表情を少し微笑ませた。
多分、昼休憩中の旦那さんなんだろうなと予測。
この手の予感は外したことがない。
ざわめく座席の細い通路と宙を泳ぐ紫煙。
「そろそろ帰るね」
ハッと我にかえったろうリサコはウンと頷き「またね」と手を振った。
恋なんて出来ないってソレのせい?なんてちょっと問いたかったけど席に戻る理由がないからアタシは暖かい店内から凍える歩道を北へと脚を向けた。
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